こんにちは!
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩と呼ばれる疾患)の患者さんって担当したことありますか?
肩関節疾患って何となく難しそうと苦手意識を持っている人も多いんじゃないかなと思います。
まず肩関節疾患の患者さんを担当する機会がほとんどないということもあるでしょう。
私もそうでした。まず担当する機会が少ないので、病態の傾向も分からない状況でした。
現在は多くの肩関節周囲炎の方を担当する機会があり、少しずつポイントが掴めてきました。
この記事では、肩関節周囲炎の基礎知識(病態と原因)と診ておくべきポイントをまとめました。
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病態
まず病態です。
肩関節周囲炎は主に50歳前後に生じます。肩関節を中心にして、時には上肢まで広がる痛みが主症状です。
可動域の制限は、特に外転・外旋方向で出現しやすくなります。
病態でポイントとなるのは、肩関節周囲炎は自然に治癒する傾向にあるということです。
発症初期は強い痛みや夜間痛があり、人によっては可動域制限も著明に出現してきます。
患者さんも治るのか不安になる方も多いですが、時間経過とともに自然と治癒しやすい予後良好な疾患です。
治癒期間
治癒の期間は人それぞれで、文献によっても報告は様々ですが、おおよそ1年~2年程度で自然と治癒してくると言われています。
多くの疾患がありますが、肩関節周囲炎は比較的経過が良好なんですね!
こういった事をしっかりと患者さんへ説明し、安心してもらう事は大切だと感じています。(もちろんあまりリハビリ職から患者さんへ対して断言した事を言うと色々と問題が生じることもありますが…)
原因
肩関節周囲炎の原因ですが…未だにはっきりとした原因は不明です。
仮説として肩峰下滑液包の炎症性変化や癒着、上腕二頭筋の長頭腱炎や腱鞘炎、関節包自体の炎症や線維性の肥厚などが挙げられています。
今後の研究で、ハッキリとした原因が分かってくるかもしれませんね。
ですから日頃から様々な文献をチェックしておく事は重要ですし、そういった情報が入ってくるようにアンテナを張っておくことも大切ですね!
病期
次に病期です。
肩関節周囲炎は主に3段階の時期を踏んで治癒へと向かっていきます。
-
- 疼痛痙縮期
- 拘縮期
- 回復期
※この呼び方は書籍や文献によって様々です。
疼痛痙縮期
この時期は炎症が強く、安静時痛・夜間痛が強く出現する時期になります。
医師によるステロイド注射や内服による炎症のコントロールが治療のメインになります。
リハビリも積極的に行う時期ではなく、除痛に努める時期になります。
そのためポジショニングやADL・生活指導を行なっていく方が重要になります。
拘縮期
この時期は、徐々に疼痛が軽減してくる時期になります。
しかし、関節包や腋窩陥凹の容積減少による可動域の制限が出現してきます。
そのため痛みは安静時痛が軽減し、運動時痛が主になってきます。
リハビリでは、筋・関節のアライメントを整え、可動域のさらなる制限を予防・改善していく時期になります。
回復期
この時期は、可動域・疼痛ともに改善していきます。
そのため日常生活も概ね問題なく行えるようになってきます。
リハビリでも積極的に介入し、可動域のさらなる改善に努めていきます。
夜間痛に関して
夜間痛は、就寝時の疼くような痛みです。疼痛痙縮期でみられる特徴的な症状になります。
この痛みは患者さんもかなり悩まされ精神的に落ち込む方も多いです。また睡眠不足など生活面での影響が大きく出てきます。
痛みの出る部位は、首や肩周りの筋肉や関節内など人によって訴えのある場所は様々です。
夜間痛の原因と対処法
夜間痛の原因としては、筋群の緊張亢進に伴う血行不良や関節内での何らかの炎症に伴う関節内圧の上昇などが影響しています。
対処法としては、痛みのない範囲で動かすことや就寝時のポジショニングが重要になってきます。
仰向けで寝る場合、肩の下から肘にかけてクッションなどを挿入して、肩を安定させる事が重要です。
横向きで寝る場合、クッションを抱きかかえる事で安定させる事が重要です。
特に横向きで寝る場合は、患側を下側にすると関節内圧が上昇するので注意しましょう!

引用:り整形外科HPより引用
夜間痛の消失の基準
ちなみに夜間痛消失の基準は…
肩関節伸展15°以上、外旋24.7°以上、結滞動作L3レベル以上
の獲得とされています。
これらの数値を参考にアプローチを行ってみて下さい。
まず診ておくべきポイント
リハビリでは、疼痛の軽減・可動域の改善がメインになってくるかと思います。
そこで重要なポイントは、大結節がインピンジメントを起こさず肩峰下を通過できるかという事です。
このために必要な要素が、骨頭が求心位にあるかどうかです。
患者さんでは骨頭の求心位に保てず、骨頭が前上方へ偏移しているケースが多いです。
骨頭の求心位からの偏移はインピンジメントの原因となり、疼痛へと繋がります。

矢印方向へ骨頭の偏移が起きやすい
評価のポイント
この骨頭の求心位が保てているかの評価ポイントは、1stポジションでの外旋制限がないか、内転可動域に制限がないかになります。
この2つの可動性が制限されている場合、肩関節の前方ないし上方の組織に短縮が生じている可能性が高くなります。
前方組織の短縮であれば大胸筋や三角筋前部線維、上方組織の短縮であれば棘上筋や僧帽筋上部線維などが関わってきます。
(もちろん関節包や靭帯など筋以外の影響もありますが)
この部分をしっかりと診ておいて、柔軟性を出し骨頭求心位を保てるようにする事で、痛みが軽減し可動域も改善していくケースが多いです。
この骨頭求心位保持が不十分なまま可動域訓練を進めると、可動域が拡大はしてきますがインピンジメントが起こりますし、棘上筋などに負担が掛かった状態ですので、将来的には腱板断裂へと繋がる可能性が高いです。
必ずこのポイントは押さえておいて下さい。
おわりに
いかがでしたか?
今回は肩関節周囲炎の病態とまず診ておくべきポイントをまとめました。
肩関節疾患に対して苦手なイメージを持っているセラピストも多いと思いますが、お伝えしたポイントを診てもらうだけでも変化が出ると思いますので、是非試して診て下さい!
最後までお読み頂きありがとうございました。