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肩関節のリハビリ【関節包・靭帯の制限部位を見分ける方法】

こんにちは!

肩関節疾患で難渋しやすい原因の一つとして、肩関節は自由度が高いために安定性に関わる組織が多く、制限因子を見分けるのが困難な事が挙げられます。

特に肩関節では筋肉の制限だけでなく、関節包や靭帯性の制限も多くみられます。

そのため関節包・靭帯のどの部分で制限されているかを見分けていくことがリハビリを進める上では重要になります。

この記事では関節包・靭帯の制限部位の見分け方をお伝えしていきます。

関節包靭帯の機能解剖

関節包の付着は近位が関節唇周囲、遠位が大・小結節周囲〜解剖頚となっています。

この関節包の一部が肥厚した部分が関節上腕靭帯と呼ばれています。

教科書などではそれぞれ別々に記載されていることも多いですが、解剖学的には関節包と関節上腕靭帯は区別するのが難しく、一体となって機能しています。

そのため関節包と関節上腕靭帯を合わせて、「関節包靭帯」と呼ばれています。

この関節包靭帯は以下の4つの部位に分類されます。

関節包靭帯の分類
  • 上関節上腕靭帯 (SGHL):小結節の上方
  • 中関節上腕靭帯 (MGHL):小結節の内側
  • 前下関節上腕靭帯 (AIGHL):解剖頚の前下縁
  • 後下関節上腕靭帯 (PIGHL):解剖頚の後下縁

さらに関節包は腱板筋群に取り囲まれ、強固に連結しています。

そのため腱板の張力も安定化に寄与しています。

腱板が存在しない部位

棘下筋–肩甲下筋間:腱板疎部と呼ばれる

小円筋–肩甲下筋間:腋窩陥凹と呼ばれる

 

関節包靭帯の役割

関節包靭帯の主な役割は生理的な弾性による静的安定化です。

また腱板深層の線維の張力も関節包の緊張を高めています。

肩関節ではこの他にも関節内圧が陰圧であることも、この静的安定化に関与しています。

 

関節包靭帯の中間位

どの部分で制限されているかを見分ける前提として、関節包靭帯の緊張が均一になる中間位を知ることが重要になります。

その位置から動かすことでどの部位が緩み、どの部位が伸張するかが分かり制限部位が見極めやすくなってきます。

関節包靭帯の中間位

関節包靭帯の緊張が均一になる中間位は、肩甲骨面での45°外転位です。

この関節包靭帯の緊張が均一になるポジションから、例えば内転 (下制)すると上方の関節包が伸張されますし、挙上・外転していくと下方の関節包靭帯が伸張されます。

関節位置と制限因子
  • 中間位から挙上:下方関節包
  • 中間位から下制:上方関節包
  • 中間位から外旋 or 外転:前方関節包
  • 中間位置から内旋 or 水平内転:後方関節包

このポジションは関節包靭帯の制限部位を見分ける上で基準となり重要ですので、必ず覚えておいて下さい!

これが理解できてくると肩関節の第1肢位、第2肢位、第3肢位の意味合いが分かってくると思います ^ ^

肩甲骨面とは?

スキャプラプレーン (scapular plane)とも呼ばれる。

解剖学的肢位では肩甲骨関節窩は約35°前方を向いており、この関節窩が向く面を肩甲骨面と呼びます。

肩甲骨面で上腕骨が動くことで、腱板筋の張力が均一になり負担が少なくなります。

 

関節包の伸張性と上腕骨頭の偏位

関節包の各々の部分が硬くなると、上腕骨頭にはどの様な影響が出るか?

関節包の伸張性と骨頭の偏位
  • 前方関節包の伸張性低下:骨頭の後方偏位
  • 後方関節包の伸張性低下:骨頭の前方偏位
  • 下方関節包の伸張性低下:骨頭の上方偏位

臨床的には後方および下方の関節包の伸張性低下が起こりやすいです 。

 

関節包靭帯の制限部位を見分ける方法

前上方関節包、上関節上腕靭帯 (SGHL )の評価

開始肢位:肩関節の第1肢位、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )

評価方法:内外旋中間位から外旋

判断基準:外旋45°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

棘上筋前部線維、肩甲下筋上部線維、烏口上腕靭帯、三角筋–大胸筋の短縮・攣縮

 

前方関節包、中関節上腕靭帯 (MGHL)の評価

開始肢位:肩関節外転45°、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )

評価方法:内外旋中間位から外旋

判断基準:外旋70°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

肩甲下筋、大胸筋の短縮・攣縮

 

 

前下方関節包、前下関節上腕靭帯 (AIGHL)の評価

開始肢位:肩関節の第2肢位、内外旋中間位 (肩甲骨を固定 )

評価方法:内外旋中間位から外旋

判断基準:外旋50°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

肩甲下筋下部線維の短縮・攣縮

 

後上方関節包の評価

開始肢位:肩関節の第1肢位、内外旋中間位 (実際は前腕が体幹に接触しない様に軽度屈曲位)

評価方法:内外旋中間位から内旋

判断基準:内旋90°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

棘上筋後部線維、棘下筋横走線維の短縮・攣縮

 

後方関節包の評価

開始肢位:肩甲骨面での外転45°、内外旋中間位 (肩甲骨固定)

評価方法:内外旋中間位から内旋

判断基準:内旋70°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

棘下筋斜走線維の短縮・攣縮

 

後下方関節包、後下関節上腕靭帯の評価

開始肢位:肩関節の第3肢位、内外旋中間位 (肩甲骨固定)

評価方法:内外旋中間位から内旋

判断基準:内旋50°まで達しない場合、伸張性低下を疑う

その他の制限因子

棘下筋斜走線維、小円筋の短縮・攣縮

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

肩関節疾患の制限因子は様々であり、しっかりと制限因子を見極めていくことが重要になります。

特に筋肉の要素だけを考えがちの方は、関節包・靭帯の制限も考慮に入れてもらえればと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました!