肩関節疾患で制限として頻発する結帯動作。
特に女性では下着の着脱やエプロンの紐を結ぶなどの際に、結滞動作が制限されているとその動作が困難となります。
そのため結滞動作の獲得に対するニーズが多くありますが、複雑な動作であり難渋しやすい傾向にあります。
そんな複雑な結滞動作のリハビリを進める上では、まずは正常なメカニズムを知る必要があります。
この記事ではそんな結帯動作のメカニズム、評価・制限因子などをまとめていきます。
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結滞動作の評価
評価基準としては、結滞動作を行なった際に母指先端(or 橈骨茎状突起)がどの椎体レベルまで動かせるかを基準に評価していきます。

結滞動作のフェーズ
結滞動作はおおよそ3つのフェーズに分けられます。
フェーズによってメカニズム・制限因子が変わりますので、担当されている患者さんがどのフェーズまで動かせるかを評価しておきましょう!

第12胸椎→第7胸椎のフェーズ:主に肩甲胸郭関節の動きで行われます。
結帯動作に必要な肩甲上腕関節の動き
スムーズに結滞動作を行う上で必要な肩甲上腕関節の動きは以下の3つの動きです。
- 肩関節伸展
- 肩関節内旋
- 軽度の肩関節外転(最終域では内転)
この中で特に肩関節伸展、内旋の可動性獲得が非常に重要になります。
さらに結滞動作の動きとしては肩関節伸展が生じた後に、内旋の動きが生じていきます。そのためまずは肩関節伸展の動きを改善していく事が重要になります。
肩甲上腕関節の制限因子
結滞動作における肩甲上腕関節の動きを阻害する軟部組織は以下になります。
- 棘下筋
- 烏口腕筋
- 小円筋
- 後方および上方関節包
特に多くの文献で棘下筋と烏口腕筋への介入で、結滞動作の改善が得られたと報告されています。
これらの筋の伸張性や周囲組織との癒着がないかを評価していきます。
骨頭の前方偏位に注意
結滞動作時は上腕骨前方部での動きとなります(下図の青印の部分)。

そのため肩関節疾患で多くみられる骨頭が前方偏位した状態では、そもそも結滞動作が困難となり肩関節前方に伸張感を訴えられます。
評価で骨頭の前方偏位がみられた場合は、まずは骨頭の前方偏位をしっかりと改善しておく必要があります。
骨頭の前方偏位に対するリハビリは以下を参照下さい。

結滞動作に必要な肩甲胸郭関節の動き
結滞動作における肩甲胸郭関節(肩甲骨)の動きは以下になります。
- 前傾
- 下方回旋
- 内転(外転)
これらの動きはフェーズによって変わってきます。
前傾
前傾の動きは母指先端が下位胸椎のフェーズまでで生じます。
それ以降のフェーズではほぼ前傾の動きは観察されません。
下方回旋
第5腰椎から第12胸椎のフェーズではまず上方回旋の動きが生じます。その後、第12胸椎から第7胸椎のフェーズで下方回旋のフェーズで生じます。
内転
内転の動きは前傾と下方回旋の動きの組み合わせによって生じます。
結滞動作における肩甲骨周囲筋の活動
結滞動作における肩甲骨周囲筋としては、主に僧帽筋と前鋸筋が関わってきます。
僧帽筋上部線維
肩甲帯の挙上する目的で結滞動作の開始より活動します。
全般的に活動を認めますが、第12胸椎から第7胸椎のフェーズでは次第にその活動は弱まってきます。このフェーズでは、上肢をより高位に動かしていくために肩甲骨が下方回旋する必要があるため、活動としは弱まってきます。
僧帽筋中部線維
僧帽筋上部線維と同様に開始より筋活動を認めます。
開始時の肩関節外転・内旋により肩甲骨は前傾・外転方向へ誘導されます。この肩甲骨の外転に対して、肩甲骨内転作用を有する僧帽筋中部線維が活動することで、肩甲骨を安定させます。
さらに母指先端を第12胸椎より高位に動かしていく際には、肩甲骨の過剰な上方回旋や外転を抑制するため、筋活動の増大を認めます。
僧帽筋下部線維・前鋸筋
僧帽筋下部線維および前鋸筋は第5腰椎〜第12胸椎のフェーズでは、筋活動は認められず第12胸椎以降のフェーズで認められます。
第5腰椎〜第12胸椎のフェーズでは肩甲骨の前傾が必要とされており、前傾を制動するこれらの筋活動は抑制されると考えられます。
第12胸椎以降のフェーズでは肩甲骨の前傾運動が減少してきますので、肩甲骨下角の浮き上がりを制動する目的で両筋の活動が増加してきます。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
リハビリ場面で難渋しやすい結滞動作のメカニズムについてまとめていきました。
この記事が結滞動作の評価、アプローチへと繋げる一助になればと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました!