膝関節伸展に制限があると、どんな悪いことがあるの?
可動域を改善する方法も知りたい!
今回はこんな悩みを解決していきたいと思います。
- 膝関節の伸展制限が及ぼす悪影響
- 膝関節伸展の制限因子
- 膝関節の伸展制限の改善方法
膝関節の伸展制限は、リハビリをしていると頻繁に遭遇する現象の一つに挙げられます。
パッとみると膝関節が完全伸展していると思われる方でも、しっかり観察するとわずかな伸展制限が生じていることは非常に多いです。
高齢者のみならず、若い患者さんでもよくあることだよね
でも、このわずかな膝関節の伸展制限があるだけでも、膝の不安定性や痛みを引き起こす原因となるので、しっかりと改善しておく必要があります。
むしろこのわずかな膝関節の伸展制限を放っておくことで、痛みが長引いたり、将来的な膝関節の変形へと繋がる可能性も……。
そんなわけで本記事では膝関節の伸展制限が及ぼす悪影響、さらに膝関節の伸展制限の改善方法についてまとめていきます。
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膝関節伸展制限が及ぼす悪影響
別に膝が少しくらい伸びなくても問題なんじゃないですか?
実際、筆者も新人の頃は伸展制限が–5°程度だったら別に問題ないだろうと考え、その程度の制限は気にしていない時期もありました。
でも、こういったわずかな膝関節の伸展制限でも放っておいたことで、なかなか患者さんの痛みが治らないことも多く経験しました。
また伸展制限は、膝関節のみならず身体に様々な影響が現れてくるので、必ず改善しておく必要があります。
膝関節の伸展制限が招く関節の不安定性
膝関節は股関節などに比べ、骨構造的には不安定な関節です。
そのため、筋や半月板、靭帯を中心とした軟部組織によって安定が図られています。
特に膝関節は完全伸展することで、内・外側の側副靭帯の緊張が増し前額面上で安定します。
膝関節はその構造から前額面での動きはほぼなく、前額面上のストレスには不利な構造。
なので、完全伸展がとれることで前額面上の安定性が増して、歩行の初期接地(IC)などの荷重衝撃に対応できるようになってきます。
実際に過去の報告でも…
変形性膝関節症(以下、膝OA)の患者は初期接地時での膝関節屈曲角度がより大きく、重度膝OA患者でさらに屈曲角度が大きくなる傾向がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/4/33_611/_pdf
初期接地時での膝関節屈曲角度と膝OAの進行とは関連がある
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/4/33_611/_pdf
このような報告からも、膝関節に伸展制限があると、急激な膝OAの進行が起こる危険性が考えられます。
このように膝関節の伸展制限によって、代償性に筋群が過剰収縮したり十字靭帯や半月板など関節構成体への負担となり、少しずつメカニカルストレスが加わり痛みや変形の進行へと繋がっていきます。
わずかな制限が関節へ負担を掛けていくよ
膝関節の伸展制限と疼痛の関係
前述したように膝関節が完全伸展しないことで、靭帯や半月板へのストレスへと繋がります。
このストレスに伴う微細な損傷によって、徐々に痛みが出現してきます。
また不安定性の代償として筋群が過剰収縮し、トリガーポイントが形成されることも疼痛へと繋がります。
トリガーポイントは痛み治療で欠かせない概念だよ
そして逆説的にはなりますが、この膝関節の伸展制限の原因として痛みを拾いやすい組織でもある膝蓋下脂肪体の柔軟性低下が関与してるケースが多いんです。
この膝蓋下脂肪体は疼痛感受性が高く、炎症などで繊維化しやすく柔軟性の低下が起こりやすい特徴。
膝関節の屈伸に伴い膝蓋下脂肪体が移動できるだけの柔軟性を有していることが、痛みの軽減に繋がってきます。
膝関節疾患の患者さんを多くみていると、この伸展制限が残存した方は膝の痛みがなかなか改善しないという傾向性があります。
逆に伸展制限を解除することで、痛みが軽減してくるケースを多く経験します。
膝関節伸展制限の原因
膝関節の伸展制限の原因として、ザッと以下の組織が挙げられます。
- 膝蓋上嚢の柔軟性
- 膝蓋下脂肪体の柔軟性
- 大腿骨前脂肪体
- 内外側膝蓋支帯の柔軟性
- 内外側膝蓋大腿靭帯の柔軟性
- 大腿四頭筋の筋力低下(短縮域)
- ハムストリングスの伸張性
- 腓腹筋の伸張性
- 後方関節包の柔軟性
- 脛骨の回旋可動性
- 膝蓋骨の可動性
上記のように多くの組織が、膝関節伸展制限の原因として考えられます。
伸展制限だから必ずコレというものはないので、触診や股関節・足関節肢位を変えながら、膝関節伸展制限の評価をして制限因子を特定していきます。
特に下記は膝関節の伸展制限の原因となりやすいです。
制限因子となりやすい場所
- 膝蓋下脂肪体の柔軟性低下
- 内側ハムスト-腓腹筋内側頭間の滑走性低下
膝蓋下脂肪体は、特に痛みなどのない人でも柔軟性が低下しているケースが多いので必ずチェックしたいポイントです。
伸展制限の改善には、この脂肪体へのアプローチが必須と言っても良いくらい、多いのが脂肪体の硬さによる制限です。
また内側ハムスト-腓腹筋内側頭間も筋肉が隣接する場所で、滑走性が悪くなりやすく、伸展制限の因子となります。
膝関節伸展の制限に対するリハビリアプローチ
前述のように膝関節伸展制限の要因として、膝蓋下脂肪体や内側ハムスト-腓腹筋内側頭間の滑走性低下を認めるケースが非常に多いです。
多くの伸展制限がこの2ヵ所で改善することが多いよ
それぞれのアプローチ方法について解説していきます。
膝蓋下脂肪体に対するリハビリ
膝蓋下脂肪体は膝蓋骨や大腿–脛骨間に存在し、関節の安定や骨同士の動きを円滑にしています。
非常に繊維化や癒着しやすい組織ですので、柔軟性が低下すると挟み込まれるような形で可動域制限へと繋がってきます。
膝蓋下脂肪体へのアプローチとしては、関節裂隙部で内側から外側へ向けて膝蓋下脂肪体を圧迫しながら押していきます。
そして外側から内側へ少し戻して、また内側から圧迫を加えていくことを繰り返します。
脂肪体は動かすことで柔らかくなる組織だよ
患者さんでは、この膝蓋骨脂肪体がかなり硬くなって肥厚しているケースが多く、最初は痛みを感じる人も多いので注意してほぐしていきましょう。
内側ハムスト-腓腹筋内側頭間のアプローチ
内側ハムスト-腓腹筋内側頭間は、隣接して筋肉なので滑走性低下がよく起こるポイントです。
筋肉の位置関係からも内側ハムストリングスは内側へ、腓腹筋内側頭は外側へ徒手的にスライドし筋間を広げるようにします。
その状態から軽く膝の屈伸を繰り返し、筋間を広げていくイメージでリリースしていきます。
人によっては痛みを訴えるケースもあるので、最初は優しくしていくと良いでしょう。
膝関節のリハビリを学べるおすすめ書籍
最後に膝関節の解剖、運動学への理解を深めるための書籍を紹介します。
まず膝関節を診るセラピストに全力でおすすめするのが、「園部俊晴の臨床 膝関節」という書籍。
膝の解剖・運動学から、痛みに関わる組織の評価・治療まで網羅されていて、まさに膝関節のバイブル的1冊。
また石井先生監修のこちらの書籍も、膝関節の機能解剖や運動学を深く学べる良書です。
どちらも持っておいて損しない書籍だよ
まとめ:膝関節伸展の制限には、脂肪体へのアプローチが有効
いかがでしたでしょうか?
今回は膝関節伸展制限が及ぼす影響と、リハビリでの改善方法についてお伝えしました。
膝関節伸展の制限を改善するには、膝蓋下脂肪体と大腿骨前脂肪体へのアプローチが有効なケースが非常に多いです。
膝関節のわずかな伸展制限は、痛みや将来のOAなどに繋がるため、必ず改善しておきたいポイントになります。
完全伸展を目指そう!
今回は以上です。