膝関節伸展制限が及ぼす影響と改善方法

膝関節伸展制限は臨床でよく見かける現象の一つに挙げられます。

一見すると膝関節が完全伸展していると思われる方でも、しっかり観察するとわずかな伸展制限が生じていることは非常に多いです!

これは高齢者のみならず、若い患者さんでもよく観察されます。

臨床で非常に多く観察される膝関節の伸展制限ですが、この伸展制限は膝関節疾患では必ず改善しておきたいポイントになります。

この記事では膝関節伸展制限が及ぼす影響と改善方法についてまとめていきます。

膝関節伸展制限が及ぼす影響

“伸展制限が–20°とかならまだしも、別に膝が少しくらい伸びなくても問題ないよ”と思われる方もいらっしゃると思います。

実際、私も伸展制限–5°程度は問題ないでしょ!と考え、その程度の制限は気にしていない時期もありました。。

しかし膝関節伸展制限を放っておくと膝関節のみならず身体に様々な影響が現れてきます。

 

膝関節伸展制限が招く不安定性

膝関節は股関節などに比べ骨構造的には不安定な関節です。

そのため筋や半月板、靭帯を中心とした軟部組織により安定が図られます。

 

膝関節は完全伸展することで、関節外靭帯である内・外側側副靭帯の緊張が増し前額面上で安定してきます。

(関節内靭帯である前十字靭帯靭帯も伸展位で緊張し、矢状面上での安定に関わってきます。)

膝関節はその構造から前額面での動きはほぼなく、ストレスには不利であると言われています。

そのため完全伸展がとれることで前額面上の安定性が増し、歩行の初期接地(IC)などの荷重衝撃に対応できます。

過去の報告では…

変形性膝関節症(以下、膝OA)の患者は初期接地時での膝関節屈曲角度がより大きく、重度膝OA患者でさらに屈曲角度が大きくなる傾向がある

初期接地時での膝関節屈曲角度と膝OAの進行とは関連がある

このように報告があり、膝関節伸展制限がある場合には、急激な膝OAの進行を示しています。

 

ちなみに膝関節の屈曲位では、筋群の過剰収縮や前・後十字靭帯が交差することで前額面上での安定を担います。

そのため変形性膝関節症(以下、膝OA)では前・後十字靭帯が断裂・損傷していたり、過緊張のため靭帯の付着部である脛骨の顆間隆起が急峻化している現象が確認されることが多いです。

膝関節伸展制限が生じることで、少しずつメカニカルストレスが加わり、代償性に筋群が過剰収縮で対応したり、十字靭帯や半月板など関節構成体への負担となり、痛みや変形の進行へと繋がっていきます。

 

膝関節伸展制限と疼痛の関係

前述したように膝関節が完全伸展しないことで靭帯や半月板へのストレスへと繋がります。

このストレスに伴う損傷により痛みが出現することも多いです。

また不安定性の代償として筋群が過剰収縮し、トリガーポイントなどによる筋性疼痛にも繋がります。

 

そして逆説的にはなりますが、膝関節伸展制限の要因として痛みを拾いやすい組織である“膝蓋下脂肪体の柔軟性低下”が影響してるケースが非常に多く見られます。

この膝蓋下脂肪体は疼痛感受性が高く、炎症などで繊維化しやすく柔軟性の低下が起こりやすいです。

膝関節の屈伸に伴い膝蓋下脂肪体が移動できるだけの柔軟性を有していることが、痛みの軽減に繋がってきます。

 

私見にはなりますが、膝関節疾患の患者さんを多くみているとこの伸展制限が残存した方は膝の痛みがなかなか改善しないという傾向性があります。

逆に伸展制限を解除することで痛みが軽減するケースも多く経験します。

 

膝関節伸展の制限因子とアプローチ

膝関節の伸展制限の要素として以下の組織が考えられます。

  • 膝蓋上嚢の柔軟性
  • 膝蓋下脂肪体の柔軟性
  • 内外側膝蓋支帯の柔軟性
  • 内外側膝蓋大腿靭帯の柔軟性
  • 大腿四頭筋の筋力低下(短縮域)
  • ハムストリングスの伸張性
  • 腓腹筋の伸張性
  • 後方関節包の柔軟性
  • 脛骨の回旋可動性
このように多くの要素が制限因子として考えられます。

伸展制限だから必ずコレというものはないので、触診や股関節・足関節肢位を変えながら、膝関節伸展制限の評価を行っていき制限因子を特定していきます。

 

アプローチ

前述のように膝関節伸展制限の要因として多くの組織が挙げられますが、臨床では膝蓋下脂肪体へのアプローチで改善を認めるケースが非常に多いです。

膝蓋下脂肪体は膝蓋骨や大腿–脛骨間に存在し、関節の安定や骨同士の動きを円滑にしています。

また非常に繊維化や癒着しやすい組織ですので、柔軟性が低下すると挟み込まれるような形で関節の可動域制限へと繋がってきます。

臨床では膝蓋下脂肪体の内側部分で硬さが生じていたり、特に膝蓋骨内側部分での柔軟性低下が生じているケースを多く経験します。

 

アプローチとしては関節裂隙部で内側から外側へ向けて膝蓋下脂肪体を圧迫しながら押していきます。

そして外側から内側へ少し戻して、また内側から圧迫を加えていくことを繰り返します。

 

 

さらに膝蓋骨内側から関節裂隙へ向かって斜め下方に向かって脂肪体を捉えたままでスライドしていきます。

柔軟性が低下した症例では、途中で抵抗感が出てきますので歯磨き粉をチューブから絞り出すようなイメージでじっくりとスライドさせ柔軟性を改善していきます。

 

このように膝蓋下脂肪体の柔軟性をしっかりと改善させると膝関節の伸展可動性を再度チェックしてみて下さい!

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おわりに

いかがでしたでしょうか?

膝関節伸展制限が及ぼす影響と改善方法についてお伝えしました。

わずかな伸展制限が痛みや将来のOAなどに繋がるため、必ず改善しておきたいポイントになります。

アプローチでは膝蓋下脂肪体で改善するケースも多いので是非試してみて下さい!

最後までお読み頂きありがとうございました!