変形性膝関節症をはじめとする膝関節疾患は、臨床でも非常に多く遭遇する疾患だと言えます。
患者さんの訴えとしては、ほぼ間違いなく痛みが挙がってきますね!
特に多いのが、膝内側部痛や膝前面痛(Anterior Knee Pain:AKP)です。
この痛みの原因としては、多くの可能性が推察されます。
しかしどの組織、どの動きが痛みに関わるかということを知っていないと可能性も推察できません。
ですから、まずは膝の痛みに関わる組織を知ることが大切になってきます。
今回は、私が膝関節疾患を診る際に必ずチェックしている“膝蓋下脂肪体(infrapatella fat pad:IFP)”についてお伝えしていきたいと思います。
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膝蓋下脂肪体とは
膝蓋下脂肪体は、膝蓋腱の後方かつ関節包・半月板の前面に位置する脂肪組織です。

この膝蓋下脂肪体の特徴として、神経支配が豊富で疼痛感度が高いことが挙げられます。
そのため膝前面痛の原因となることも多いです。
またこの膝蓋下脂肪体は、炎症などで容易に線維化(柔軟性の低下)しやすいことも特徴として挙げられます。
膝蓋下脂肪体の動態
膝蓋下脂肪体は膝関節屈曲では大腿骨顆間窩に位置し、伸展にて前方へ移動してきます。
そのため柔軟性が低下した状態では、伸展時の前方移動が不十分になり膝蓋骨の下方偏位や膝蓋腱周辺部の扁平化を招いてしまいます。
膝蓋下脂肪体の特徴として、移動は内側に比べ外側が有意に大きいとされています。
正常膝では膝蓋下脂肪体の移動を受け入れるために、外側膝蓋支帯の柔軟性を有しています。

そのため外側支帯のスペースが狭くなることで膝蓋下脂肪体の内圧が高まりやすくなります。
膝蓋下脂肪体と痛みの関係
膝蓋下脂肪体は神経支配が豊富で疼痛感受性が高く、痛みにも大きく関わっています。
関節鏡による侵襲やメカニカルストレスによる炎症で、柔軟性が低下し痛みへと繋がってきます。
関節運動の中では、膝関節深屈曲および浅屈曲位でIFPの内圧が高まるとされています。
ある研究では膝屈曲20°未満、100°以上で内圧が優位に増加したと報告されています。
この角度は普段の動作でみると、臨床でも痛みの訴えが多いしゃがみ込みや階段の降段時の支持脚にあたります。
そのため膝蓋下脂肪体の柔軟性が低下した状態で、しゃがみ込みや降段動作が行われると痛みが生じる可能性があります。


また膝関節伸展位で前方移動すると前述しましたが、膝蓋下脂肪体の柔軟性が低下した状態で伸展の強制によりインピンジメント様の疼痛が出現する場合もあります。
膝蓋下脂肪体の評価方法
膝蓋下脂肪体の評価としてはHoffa’s testが挙げられます。
膝蓋腱深部で膝蓋下脂肪体を圧迫し屈曲位から伸展へ誘導し、内圧を高めていきます。
この際に疼痛が生じるかを確認していきます。

また膝蓋下脂肪体の柔軟性が低下した状態では、膝蓋腱の深部を左右それぞれから圧迫した時の移動が制限され抵抗感を感じます。
この抵抗感も一つの基準となります。

膝蓋下脂肪体の治療
前述した通り、正常では膝蓋下脂肪体の移動を受け入れるために外側膝蓋支帯の柔軟性を有しています。
そしてこの外側膝蓋支帯の柔軟性が低下すると、膝蓋下脂肪体の内圧が高まり疼痛へと繋がる可能性があります。
外側膝蓋支帯は…
- 外側広筋
- 腸脛靭帯
- 大腿直筋の一部の線維
から成ります。
これらの筋群は膝疾患では、柔軟性が低下していることが多いです。
膝蓋下脂肪帯の観点からみてもこれらの筋群の柔軟性は必要になってくるんですね。
脂肪組織ということは
脂肪組織の特徴として、摩擦刺激で柔らかくなるということがあります。
そのため膝蓋下脂肪体を圧迫したりマッサージのように解すことで柔軟性が出てきます。
膝蓋下脂肪体の動きをイメージしながら、圧迫+上方への牽引などを加えながらリリースしていきます。

おわりに
いかがでしたでしょうか?
脂肪組織といえど、意外と膝の痛みと関わっていることが多い膝蓋下脂肪体。
普段の臨床にプラスして診ていけば、新たな発見があるかと思います。
ぜひ取り入れてみて下さい^_^
最後までお読み頂きありがとうございました!